少子高齢化による人手不足な業界の一つに「介護」があります。若い労働者の人手が欲しいものの、なかなか採用が難しい現状が続く中で、政府は外国人労働者の雇用を促進しています。なかでもフィリピンは元々海外への就労者が多く、若い労働人口の多い国です。この記事ではフィリピン人の介護士を雇用するメリットや、介護業界で就労可能な在留資格をご紹介します。
介護業界でフィリピン人を雇用するメリット
厚生労働省が出した「外国人雇用状況の届出状況」によると、2021年10月時点で日本に暮らす外国人労働者の数は172万人以上おり、統計をとり始めて以降過去最高を記録しています。国籍別にみるとベトナム、中国に次いで3番目に多いのがフィリピンです。また産業別にみた外国人労働者の数は、医療、福祉分野で57,788人おり、そのうち14,704人がフィリピン出身者です。医療、福祉分野で活躍する外国人労働者の約4割を占めるフィリピン人を雇用するメリットをみていきましょう。
メリット①労働人口が多い
国連の調査によると、日本の高齢化率は2022年時点で29.87%に対し、フィリピンは5.35%。2060年には日本が38.26%、フィリピンが13.10%になると予測されています。あと40年もしないうちに日本の4割弱が高齢者になるという予測に、私たちは危機感を覚えなければいけません。
両国の労働力人口を比較してみても、日本が7,262万人から2060年には4,943万人へ減少する一方で、フィリピンは7,355万人から1億1,000万人への増加を見込んでいます。こうしたデータから、労働力の確保は一刻も早く対応すべき課題として取り組む必要があり、これから労働力人口が増加すると予測されるフィリピンから働き手を受け入れることは、日本産業において大きなメリットとなります。
特に介護の分野は、高齢化問題がダイレクトに影響する業種でもあり、人手不足に直面する介護現場において外国人労働者の受け入れは早急に検討すべきことでしょう。
メリット②国外労働者が多い
フィリピンは国内の賃金が低く、家族を支えるために高賃金を求め海外へ出稼ぎに出るフィリピン人が多くいます。フィリピン国家統計局によると、2021年には182万人の出稼ぎ労働者がおり、海外労働者の送金によりフィリピンの経済が支えられているともいわれています。
OFW(Overseas Filipino Workers)と呼ばれる海外フィリピン人労働者の数は年々増加傾向にありましたが、コロナ渦で出入国が制限されたため、過去最高を記録した2019年の220万人から翌年その数は一時減少しました。しかし海外渡航制限が緩和されはじめ、出稼ぎ労働者の数は再び回復しつつあります。
国民の10人に1人が海外に居住しているフィリピン人にとって、出稼ぎ労働は身近なもので、海外で働くことに対して積極的な姿勢がみられることもメリットのひとつです。
メリット③ホスピタリティが高い
フィリピン人は、全人口の8割以上がカトリック教を信仰しています。聖書に書かれている隣人(他者)を愛すという教えから、幼い頃から困っている人を助ける相互扶助の精神が身についているのです。だからこそフィリピン人は人を温かくもてなす心に溢れ、「フィリピーノ・ホスピタリティ」という言葉が存在するほど、魅力的な国民性を持っています。
フィリピン人のホスピタリティの高さは、サービス業において高く評価され、介護分野でも活かせる大きな強みとなります。施設入居者や利用者へ行き届いた細かなケアができ、人を楽しませることが好きな国民性も活かしながら、利用者やスタッフとの円滑なコミュニケーションが期待できるでしょう。
新たな在留資格、特定技能「介護」とは?
特定技能は、2019年4月に新設された在留資格です。少子高齢化が加速する日本社会において、労働力の確保が早急に求められる対象業種14種類の中に介護も属しています。
今介護現場は人手不足が深刻な状況にあり、一日でも早く人員の確保をしなければ、職員への負担が加速し、離職者が増えていく一方です。
そのような状況下で特定技能は他の在留資格と比べ、現場の即戦力となるというのが一番の強みとなります。在留資格「介護」のように高度な日本語レベルや介護福祉士の資格は必要なく、特定活動EPAのように要件時に学歴を問われることもありません。また技能実習のように制限される業務内容や規定もなく、特定技能は、人手不足の現場に大きな即戦力となる今一番期待される在留資格ではないでしょうか。
「介護」業界で就労できる在留資格の比較
介護の分野で外国人が就労できる在留資格は「特定技能」の他に、「技能実習」、「特定活動(EPA)」、在留資格「介護」の全部で4つあります。それぞれの目的や在留期間、業務内容の違いについて比較しながらご紹介していきましょう。
①技能実習「介護」
2017年11月に技能実習法の施行に伴い、外国人技能実習制度の対象業種に介護が追加されました。技能実習は日本で学んだ知識、経験を母国へ持ち帰り経済発展につなげる技術移転が目的とされており、最長5年の在留期間が定められています。そのため在留期間が終了した帰国後には、同業種への就労が前提とされています。しかし、特定技能への移行や介護福祉士の試験に合格すると在留資格「介護」への移行が可能です。また日本語レベルにおいてはN4以上の日本語能力が求められます。
業務内容は身体介護に付随する介護業務全般となります。特徴としては特定技能や在留資格「介護」とは違い、技能実習生のみでの夜勤業務が認められないことや、訪問系サービスには従事できないなどの制限があります。
また受け入れ先の事業所にも決まりがあり、設立から3年以上経過した事業所でなければ、技能実習生を受け入れることはできません。さらに5名の技能実習生に対し、事業所における1名の技能実習指導員の配置が必須です。人員として配置できるまでには数カ月かかり、指導や助言を行いながら育成期間を要します。
②特定技能「介護」
介護福祉士の資格は必要なく、既定の試験に合格することが必須となります。その試験は
「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」「日本語能力試験(N4以上)」とがあり、合格が条件です。学歴を問われることはありませんが、相当程度の日本語レベルと介護現場で使われる日本語や介護に関する基本的な知識を身に着けておく必要があります。
また業務内容は入浴介助や食事介助など全般の介護業務に従事することができ、訪問系サービス以外の業務内容に幅広く対応できます。他の技能実習や特定活動とは異なり、1人で夜勤業務に従事することもでき、制限が少ないことが特徴です。
在留期間は最長5年ですが、日本在留中に介護福祉士を取得すると、在留資格「介護」へ移行することが可能で、永続的に日本の介護現場で働くことができます。
③在留資格「介護」
2017年9月に創設された在留資格で、日本の介護福祉士養成施設を卒業後、介護福祉士の資格を取得した外国人が介護施設等で就労できるというものです。介護福祉士の国家資格取得が必須となっており、在留期間は、5年、3年、1年、3カ月と定められていますが、他の在留資格とは異なり、更新回数に制限がないため、契約中にトラブルがない限り永続的に在留することができます。また、家族の帯同も認められていることが特徴です。しかし、養成学校への入校には、N2程度の日本語能力が必要となり、他の在留資格と比べると必要とされる日本語レベルが高い上に、2年間の養成期間が必要です。他の在留資格よりも難易度が高い分、業務内容に制限がなく夜勤業務や訪問系サービス、病院での就労も可能で、幅広い介護業務が可能となります。
※N2レベル→幅広いトピックについて書かれた新聞や雑誌の記事を読むことができ、自然に近いスピードの日常会話やニュースを聞き取り趣旨を理解することができるレベル。
④特定活動EPA
特定活動は、二か国間の経済活動の強化を目的とした経済連携協定(EPA)に基づいた在留資格で、介護福祉士の国家資格の取得が目的となります。対象国はインドネシア、ベトナム、フィリピンの3か国のみで、フィリピンからの送り出しは2009年度から始まりました。対象者は4年制大学の卒業に加えフィリピン政府による介護士認定を受けた者、またはフィリピンの4年制看護学校を卒業した者に限ります。
母国で6か月の日本語研修を終え、N5程度の要件を満たせば特定活動としての入国が認められ、その後日本でも6か月の研修を修了することで介護施設での就労がはじめて可能となります。他の在留資格同様、介護福祉士を取得することができれば、在留資格「介護」へ移行することができ、永続的に期間を更新することができますが、最長4年の在留期間内に合格しなければ帰国しなければなりません(不合格の場合1年間に限り、再受験のための延長が可能)。不合格の場合でも一定の条件を満たせば特定技能への移行が可能で、最大5年の延長ができます。
技能実習、特定技能定は訪問系サービス以外は就労可能ですが、特定活動は、就労が可能なサービスに制限があることが特徴です。
「介護」業界での雇用には特定技能がおすすめ
介護分野における4つの在留資格について、それぞれの特徴をご紹介してきました。
4つの在留資格のうち実際にフィリピン人を雇用する上でおすすめしたいのが、現場で即戦力となる特定技能の在留資格です。在留資格「介護」の場合は、業務内容に制限はなく、永続的な雇用が可能ですが、受入調整機関が存在しないため、施設側ですべての受け入れ業務の調整が必要というデメリットがあります。特定技能の場合は、外国人労働者の就労や生活に関わるサポート役を担う登録支援機関を利用することが可能です。特にはじめて外国人を雇用する法人や施設側にとっては、そのような支援機関の存在が大きな安心材料となるでしょう。
また、技能実習や特定活動と比べると、就労制限もなく、可能な業務内容は幅広く、習熟すれば夜勤業務を任せることもできます。相当の日本語レベルや介護に関する日本語や基本的な知識といった要件をすでに満たしている人材なので、採用から就労開始まで就学や研修に時間を要することなく、すぐに現場に入って即戦力となれる特定技能の雇用をおすすめします。
特定技能の登録支援機関について
特定技能外国人を受け入れる場合、定められた支援が必要となります。
「登録支援機関」とは、特定技能外国人(1号)が、特定技能の在留資格に基づく活動を円滑に行えるよう支援を行う機関です。
「登録支援機関」の支援内容は、下記の10項目です。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保に・生活に必要な契約に係る支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
特定所属機関(受入れ機関)は、事前ガイダンスの他にも、受け入れる外国人人材に対してこの項目にある支援を実施しなければいけません。
弊社は「登録支援機関」として、外国人人材がより長く安心して日本で働けるためのご支援を行っております。
外国人人材の雇用を検討している、人手不足を解消したい企業様へ無料でご相談に乗りますので、外国人人材雇用に関するお悩みやご質問がございましたら、ぜひお問い合わせくださいませ。