外国人を雇用するメリットとは?注意点と合わせて解説!

国内での労働者不足により、外国人雇用のための制度や助成が進んでいます。特定技能という在留資格も増え、外国人人材が活躍できる分野も増えつつあります。しかしながら外国人を雇用する経験が少ない場合、手続きや社内体制への心配も感じていないでしょうか?この記事では、外国人を雇用することによるメリットやデメリット、注意点を解説します。

外国人の雇用は年々増えている

外国人雇用に関する制度が整備されはじめ、国も事業主に対して外国人雇用を積極的に薦めています。日本人の配偶者などの身分による在留資格を持つ外国人の他に、技能実習や特定技能制度を利用して、就労を目的とした多くの外国人の方が来日しています。まずは日本における外国人労働者の推移をみていきましょう。

国内の外国人労働者の推移

こちらは2021年10月末に、厚生労働省から発表された「外国人雇用状況」についてまとめられたものです。2021年時点では、日本に172万人を超える外国人労働者がいることがわかりました。

この図をみると、統計をとり始めた2008年から13年の間に、外国人労働者の推移は3倍以上に増えています。2012年からは右肩上がりで増加し続け、外国人労働者雇用の需要が年々高まっているといえます。

増加の背景としては、政府が高度外国人人材や留学生の受け入れ、留学後の日本での就職支援を積極的に行ってきたことや、雇用情勢の改善を目的に、特定技能制度や技能実習制度が活用され、海外からの人材確保に努めてきたことなどが挙げられています。コロナの影響で2019年から2021年にかけては、推移が緩やかになってはいるものの、今後グローバル化がより加速する将来を見据えると、外国人雇用の創出は会社の大きなメリットとなることでしょう。

>> 参考資料:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

2019年に新しく「特定技能」制度も創設

現在、人手不足が深刻な14分野において、2019年より外国人が就労できるようになりました。それが「特定技能」という新しい在留資格です。14分野に挙げられているのは、「介護」「建設業」「農業」「漁業」「ビルクリーニング業」「自動車整備業」「造船・舶用工業」「航空業」「宿泊業」「飲食料品製造業」「外食業」「素形材産業」「電気電子情報関連産業」「産業機械製造業」です。

特定技能制度を利用して来日する外国人は、すぐに現場で即戦力として働けるよう、一定基準の日本語のスキル、業種に関する知識や経験が必須となります。

特定技能は1号と2号に分かれており、2号は1号修了後のステップアップとして位置づけられています。2号になると在留期間の制限がなく、家族の帯同も認められています。

技能実習と混同されてしまいがちですが、大きく違うのは目的です。技能実習は、日本で学んだ技術や経験を母国に持ちかえり経済発展へ寄与する目的なのに対し、特定技能は日本の人材不足の産業分野における労働力の確保が目的となります。

>>詳しくはこちらの記事もご覧ください

外国人労働者を雇用するメリット

「外国人を採用するとなると、いろいろ問題がでてくるのでは?」と不安な思いを抱えることもあるかと思います。実際に従業員として採用するとどのようなメリットがあるかを紹介します。

①人手不足の解消

少子高齢化が加速する中、労働力人口が年々減少傾向にあるのが、日本の深刻な現状です。先ほども挙げました14分野の業種においては、人手不足が年々深刻化しており、特に介護分野を例にあげると、高齢者が増え続ける一方で、介護にあたる労働者が足りてない現状があります。それは今後の日本社会の疲弊にもつながり、早急な対策が必要となります。このような現状は介護分野のみならず、他分野においても同じことがいえるでしょう。その問題を解決するひとつの手段となるのが、外国人労働者の雇用です。全人口に対する高齢者人口の比率をみてみると、フィリピン5.35%、ベトナム8.90%、ネパール6.04%と一桁台なのに対し、日本は全人口の約29.87%が高齢者となっています。近い将来日本の労働力人口は大幅に減少し、力仕事やマンパワーを必要とする現場は、即戦力となる若い人材を優先するため、外国人雇用の需要はさらに伸び続けることでしょう。

②社内の活性化に繋がる

外国人労働者は、自国の国民性を活かしながら、働く環境や人間関係を良い方向へ変えてくれるかもしれません。たとえば、フィリピン人はホスピタリティに溢れ、手伝いが必要な時には快く引き受けてくれたり、任された業務を丁寧にかつ迅速に遂行してくれます。またフレンドリーでポジティブな性格は、従業員全体の士気を上げ、ポジティブな思考が他従業員にも良い影響を与えることでしょう。生まれ育った背景の違う相手だからこそ、日本とは違った考え方や価値観を知ることで、職場環境の改善や社内の活性化につながるかもしれません。

③多言語対応

観光に関わる外食業や航空業、宿泊業では、世界各国から日本を訪れる観光客を温かくもてなすために、インバウンド対策として多言語対応が必須となっています。その国の言語を話せる人材を確保することで、より細やかなもてなしを提供でき、日本の観光産業の更なる飛躍が期待できることでしょう。また企業のサポートセンターにおいても多言語対応にすることで、外国人のお客様に安心して利用できるサービスを提供することができます。

④海外進出の足がかりとなる

外国人を雇用することで、自国の文化や社会背景をより理解している人材が確保でき、企業の海外進出のきっかけとなりえます。独創的なアイディアを提案できたり、自国を熟知しているからこそ、その国に最適な海外進出プランを立てることができるかもしれません。また、日本人とは違った視点から、アイディアを生み出してくれたり、新しい事業プランや業務改善のヒントになることでしょう。外国人雇用はそうした大きな可能性を秘めています。

外国人を雇用することで考えられるデメリットとは?

これまで外国人雇用のメリットをお伝えしてきました。同時に、雇用したときのトラブルやミスマッチを回避するためにも、デメリットについて知っておくと良いでしょう。続いては考えられるデメリットをお伝えします。

①コミュニケーション面で時間がかかることがある

技能実習や特定技能制度を利用して来日する外国人は、相当程度の日本語スキルが必須となっています。来日前に一定期間の日本語訓練を行い、、基準値に達しているかを確認するための日本語レベルのテストを行います。基本的な単語の理解、ある程度の日常会話であれば問題ないので、身構える必要はないでしょう。しかしながら、日本人特有の「空気で察する」などの文化も存在しませんし、言葉でしっかり伝えてコミュニケーションを円滑にすすめることが大切です。日本での当たり前が、外国人の方にとっては当たり前ではないこともあります。例えば勤務態度について注意しなければならない場面でも、その理由をしっかり伝えることが必要です。そうすることで、お互いの不安や疑問も解消され、良好な関係性が築けるでしょう。

②雇用の手続きが多い

海外にいる外国人を日本に呼び寄せて雇い入れる場合は、在留資格認定証明書交付申請をして、証明書が発行された上でビザ申請を行います。申請時に必要な書類を用意する手間がかかりますが、申請が通ればひと安心です。

また、すべての事業主の方に義務付けられているのが、外国人雇用状況届出書です。オンラインでも手続きが可能です。ハローワークへの届出がなかった場合は、30万円以下の罰金が課せられますので、採用または退職後はしっかり届出を行いましょう。また採用の際は、在留カードの提示を求め、在留資格、在留期限の確認を行いましょう。在留期限が切れてしまうと、オーバーステイ(不法残留)となってしまうため、必ず期限前の更新が必要です。また雇用保険の対象となる場合は、提出期限までに雇用保険被保険者資格取得届も提出する必要があります。

③受け入れ体制作りが必要となる

「日本語スキルは習得しているからコミュニケーションはとれるだろう」と期待をしすぎてしまうと、対話がスムーズにいかない時に、互いにジレンマが生まれてしまうことも考えられます。日本語の習得は世界でも難易度が高いといわれているほど、外国人の方からすると大変難しいものです。また日本特有の文化に慣れず、外国人労働者が孤立してしまうことも考えられます。せっかく必要な人材を雇い入れることができても、そうしたことが離職にもつながりかねません。外国人労働者が困ったときに、いつでも相談できるサポート体制をしっかり作りあげておくことが大切です。

外国人を雇用する注意点

外国人労働者を雇用するにあたっては、日本人の雇用とは違った手続きや注意があります。法令違反などは受け入れる側も罰則を受けてしまいますので、しっかりと把握しておくことが重要です。

最後に、外国人労働者を雇う際の注意点を解説します。

在留資格が必要

前提として、必ず就労許可の下りた在留資格を持っていることが必要です。現在29種類の在留資格があり、そのうち就労が可能な在留資格は、医療、教育、介護、特定技能などの就労目的の資格が19種類、永住者などの身分に基づく資格が4種類、インターンシップやワーキングホリデーなどの特定活動という在留資格、計24種類となっています。特定活動は、就労が可能な場合と就労が認められない場合がありますので、注意が必要です。それぞれの在留資格の範囲内において、就労活動が認められており、在留期間が定められています。

雇い始める際には、在留カードの提示を必須とし、貴社での就労が可能かどうか確認する必要があります。

在留資格にあった業務内容でないといけない

たとえば弁護士・公認会計士として採用であれば、在留資格は法律・会計業務でなければなりませんし、中学校・高校の語学教師としての採用であれば、教育の在留資格でなければなりません。決められた就労や活動資格によって、一致した業務内容である必要があります。日本人配偶者等の身分に基づく在留資格の場合は、就労制限はありません。在留カードの確認を怠ったことで、定められた就労範囲外で働かせていたとなると、不法就労助長罪に問われる場合もありますので、採用の際は、在留カードの確認を忘れずに行いましょう。

人件費が安価になるわけではない

外国人の方を雇用する上でも、適正な賃金の支払いや労働時間の管理、法律にしたがって日本人労働者と変わりなく対応することが義務付けられています。

労働基準法や健康保険法などの法令は、国籍問わず適用されますので、当たり前かもしれませんが、法令違反となることは避けましょう。国籍に関係なく、その従業員の勤務態度や業務実績、会社への貢献度などを考慮して、適正に評価することが大切です。